「周年事業の基礎知識」の記事でも触れていますが、周年事業を計画・推進する上でまずはじめに考えなければならないのは、その「方向性」です。何を目的に、誰を対象に、どんなテーマで、どのようなゴールを目指すのか、つまり「軸」にあたる部分をしっかりと決めておくことです。
まず周年には、「企業や団体の周年」と「商品やサービスの周年」の2種類があります。そして周年を機として何らかの課題解決を目的とするのか、それとも単純に祝事として実施するのか。さらにもう少し細かく言えば、何らかの変革や改革によってそれを実現するのか、あるいは認知や絆の強化によって実現するのか。また社内や関係者を対象にするのか、市場や社会を対象にするのか?それらによって、周年事業の方向性というのは大きく変わってまいります。
ここではそれぞれ、目的別にどのようなタイプに分類できるかを述べていきましょう。
目的別に考える周年事業タイプ一覧
1.企業や団体の周年か、商品やサービスの周年か?
●企業や団体の周年事業
企業や団体の創業、設立、登記の年を基準とする。周年を機に大きな変革を目指す場合や、内部の結束強化を目指す場合、あるいは社内や関係者のみを対象とするケースから、市場や社会に対する広報活動の一環として実施するケースまで、様々なタイプが考えられる。
●商品やサービスの周年事業
商品やサービスの販売開始の年を基準とする。周年を機に、大幅なリブランディングを目指す場合や、認知やエンゲージメント強化を目指す場合などが考えられる。
2.課題解決型(ソリューション型)か、祝事型(セレブレーション型)か?
●課題解決型(ソリューション型)
周年を機に、何らかの課題解決を目指すケース。業績アップや利益拡大、企業イメージ向上、社内の意思統一、人材不足など、それぞれの企業が抱える課題解決を目指すための好機として周年事業を最大活用。下記で述べる変革・改革型(イノベーション型)と、変革・改革型(イノベーション型)+認知・絆強化(プロモーション型)の2方向があり、内外に向けた多くの施策が考えられる。
●祝事型(セレブレーション型)
特に課題解決などではなく、シンプルに祝事として周年を祝うケース。セレモニーやイベントなどのコミュニケーション活動を中心とし、比較的「お祭り感」に満ちた施策が多くなる。課題解決を目的にしないため、基本的には認知・絆強化(プロモーション型)のみの方向となり、変革・改革型(イノベーション型)の方向性は考えにくい。
3.変革・改革型(イノベーション型)か、認知・絆強化(プロモーション型)か?
●変革・改革型(イノベーション型)
上述の課題解決型(ソリューション型)周年事業の主力タイプ。内部の変革や改革によって自社の課題解決を目指す。理念やコンセプト、ビジョン、ロゴマークなどを含むCI(コーポレートアイデンティティ)再構築やVI(ヴィジュアルアイデンティティ)再構築、事業再編、中期経営ビジョンとロードマップ策定、組織改革や労働環境改革といった企業の根幹にあたる経営的な取り組みを始め、それらの一環としての様々な社内委員会活動の立ち上げや社内制度改革、ワークショップ開設など、理念再認識や浸透、意思統一、モチベーションアップなどに繋がる施策が考えられる。比較的長きに渡り事業展開を続けている長寿企業や、成熟期に入っている商品・サービスなどにおいて実施されるケースが多い。
●認知・絆強化(プロモーション型)
キャンペーン、イベント、動画などの記念コンテンツ、キャラクター開発など、コミュニケーション活動を中心とした展開。祝事型(セレブレーション型)周年事業とほぼ同義の方向性で、成長段階にある企業がより一層の社内の結束や組織力強化、モチベーションアップを目的として実施するケースや、成長段階にある商品・サービスが認知拡大やエンゲージメント強化を目的として実施するケースが多いが、課題解決型(ソリューション型)周年事業の一環として、変革・改革型(イノベーション型)と組み合わせて実施する場合もある。
4,社内・関係者向け(インターナル向け)か、市場・社会むけ(ソーシャル向け)か?
●社内・関係者向け(インターナル向け)
周年事業の対象が、社内や関係者に限定されているケース。B 2 B企業の場合はこのケースが多いが、B 2 B 2 Cを視野に入れた企業活動を行っておる場合は、これに下記のソーシャル向けのケースを組み合わせて行う。
●市場・社会向け(ソーシャル向け)
周年事業の対象を、消費者や社会全般とするケース。 主にB 2 C企業の周年事業や、商品・サービスの周年事業で実施されるが、B 2 B 2 C企業においては企業周年事業の一環として実践されることもある。
ちょっと複雑ではありますが、わかりやすく一覧にした表と相関図を、下記に貼り付けてみました。
これらの目的、タイプ、スケールの組み合わせによって、周年事業の方向性は決まってくるというわけです。周年事業のご担当者の皆様は、まず計画の始めに、これらの点について考察・議論した上で、方向性を見出してください。